幽霊屋敷訪問の様子を実況するラジオ番組のリポーターが訪れたのは、30人にも及ぶ自殺者を出したという異様な来歴を秘めた邸宅だった…。
極限の恐怖を凝縮した代表作「ゴースト・ハント」他、瀟洒な田舎の別荘の怪異譚「暗黒の場所」など本邦初訳作5篇を含む、正統的な英国怪奇小説最後の書き手と謳われる名手・ウェイクフィールドの逸品18篇を集成した、初の文庫版傑作選。
H・R・ウェイクフィールドは1888年生まれで、最後のゴースト・ストーリー作家といわれていますが、本国の英国はおろか我が国でもあまり知られていません。
さて、氏の作風の特徴は、一言でいえば「魔所」の描写にある。
表題作「ゴースト・ハント」「赤い館」「目隠し遊び」……忌まれた地や幽霊屋敷。
そこに意図して、あるいはたまたま踏み込んだ者は理由も何もない。
命すら脅かす「悪意」を抱く「人ならざるもの」に遭ってしまう……。
ただ、それだけ。それだけではあるが、そのシンプルさこそが、この作家の最大の持ち味であり、決して長くはない魑魅魍魎の描写にこそ、かつ目すべきものがある。
シンプルこそが、最も最も最も最もおそろしい怪!!
どちらかと云えば伝統的なホラーが多いが、冒頭に収録されている「赤い館」などは、時代背景を考えても現代に通じるものがあってバラエティに富んでいる。
第二次大戦前に一世を風靡しただけの事があると思うし、洋の東西を問わず古典怪談が好きなものですから、たまらない一冊でした。
昔の西洋怪奇映画を観たくなりました。もっと、古典を!
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