森達也氏の2003年から2004年の『週刊現代』連載を中心とした時評集。ちょっと立ち止まって周りを見廻してみよう。なんか変だと思ったら違和感を声に出してみよう、そんなお話。偏見や思考停止について、たとえば「トイレに行ったら手を洗うけど、男の人はその必要があるのか? みんなが触る蛇口のほうが汚いのでは? 仮にそうでも蛇口をひねって手を洗ってしまうよね」と身近な事柄が書かれていて。確かに人間って思考停止しがちで、偏見は誰でも普通に持っている。知らないことに対して恐怖を抱くし、わからない部分を自分で勝手に埋めたりするよなって。扇情的な物言いがはびこる現代社会で、森達也はひとりで冷めている。そんな自身のことを、彼は「鈍い」と表現する。変なやつ、特殊なやつと思われることも多い彼だが、この本を読むと、実は彼は特殊でもなんでもなく、軸が流されていくことのない人間だとわかる。身近な事で普通の人は気付かないこと、他愛ないとして切り捨てられることに目線を向ける。尖り始めた社会に感じる違和感を文章にしてくれる。この人の文章を読むと、なんだか落ち着く。変わらない自分だったり、頭の中にあるモヤモヤ自体を肯定してくれているような…。これを読んだ時、脳髄が揺さ振り起こされる感じがした。
青春時を一緒に駆け抜けた音楽、恋を教えてくれた映画、小さい頃から何度も何度も読み返した本…。
いつだって私の側には本と映画と音楽があった。
そして、現在進行形で刻まれているArikaの日々の「本と映画と音楽の履歴書」。
0コメント