海のイカロス/大門 剛明 (著)

東日本大震災と原発クライシスをきっかけに、クリーンエネルギーへの注目が高まっている日本。原子発電に変わる新エネルギーとして海流を利用する「潮流発電」も、世界に先駆けて、実用化が近づきつつあった。第一人者である大学助教授の正岡周平も真摯に愚直に、研究と実験に没頭している。しかし、彼の心には、資金難による研究の行き詰まりで自ら命を絶った、ひとりの女性の面影が棲み続けていた。ある日、地元企業の社長・羽藤の協力を得て、水車イカロスの発電実験を成功させた。そんな中、研究仲間・七海の自殺の真相を知った周平は、ある人物への復讐を決意する。彼女の死の本当の原因がわかったとき、哀しみと怒りが塗り込められた、驚くべき犯罪計画が動き始める…。周平が思いついたのは、おそらく人類史上誰も考えつかない殺人計画だった。美しい瀬戸内海を舞台に、一途な研究者の復讐心で血塗られた完全犯罪劇が幕を開ける哀しき倒叙ミステリー。

原発に代わるクリーンエネルギー、潮流発電、公害訴訟、特色ある瀬戸内海の自然…。それにイカロス計画という完全犯罪を絡めて、情の生き物である人間のエネルギーの話に仕上がっていてページ数の割りには考えさせられました。ミステリーとしての面白さよりも潮流発電という未知なる可能性にかける研究者の熱い志のほうが印象に残りました。


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