死んでも負けない/古処 誠二 (著)

*戦争帰りの偏屈な老人に翻弄される一家をコミカルに描いた家族小説。


祖父がビルマ戦の帰還兵で、いつも戦時中の武勇伝を得意満面に語る。

何百回と繰り返される話だが、聞かないと鉄槌が下るのだ。

その祖父が入院し、僕は信じられない光景を目の当たりにしたーーーー。

祖父の語る『死んでも負けない』の意味とは…

頑固一徹で、何処か憎めない祖父に翻弄される主人公の高校生と父親の姿が暖かみを持って、文章全体にユーモアがあふれていて、映画にしたら面白そう。

戦争世代と今の人間との決定的な断絶を感じるが、彼らの責任感の強さは並大抵では無く歴史観に裏打ちされていることには驚く。古処誠二と言えば、重苦しい寓話的な戦争小説を多く描いているが、本作はそれらとは全く異なる。著者の知られざるユーモアセンスが冴え渡る会心作!

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