ビルから転落し、一時記憶喪失となった経験を持つ男。自らの事故の理由を知るため、その目撃者を捜し出したが……。謎が響き合う9つの物語。日常の風景に潜む不条理を描き、著者の新境地を示すスタイリッシュでミステリアスな連作小説集。殺人事件が起こって解決――というようなミステリーではないけれど、読み終わるとミステリーを読み終えたような気分になる。中には心霊ミステリーもあったりの心理ミステリー。
「11:55」…待ち合わせのカフェ。偶然見かけた男が呼び起こす、過去の苦い記憶。
「45°」…事故で記憶を失った人と、その事故を目撃した人。ふたりの会話の行方は?
「/Y」…ケアホームに暮らす老先生。彼女の記憶に残る三つ又の橋をめぐる物語。
「●」…同級生がかつて住んでいた大豪邸。その敷地に埋められていたものは?
「+-」…人を太らせると、何になる? 通学バスで繰り返されるなぞなぞの連鎖。
「W.C.」…我慢できない尿意。次々と現れる奇っ怪なトイレの扉を開けてみると……。
「2°」…念願のマイホーム。家の半分を貸し出したリサのまえに現れた入居人は?
「×」…葬儀社に職を得たハルユキ。彼のもとに若い女が持ちこんだ奇妙な依頼。
「P.」…突然行方不明となった義兄。姿を消す前に彼が話した過去の不思議な体験。
…というように、一つ一つの記号のようなタイトルのつけ方も面白いし、どれも味わい深くて楽しめた。
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