邦画『タンポポ』

■固定観念にとらわれてはいけない!!


初監督作品「お葬式」で高い評価を受けた伊丹十三の監督第2作目。タンクローリーの運転手が、さびれたラーメン屋を経営している美しい未亡人に惹かれるまま、そのラーメン屋を町一番の店にするまでを、他に13の食べ物にまつわるエピソードを織り交ぜて描く。出演は山崎努、宮本信子、役所広司、渡辺謙。タンクローリーの運転手ゴローとガンは、ふらりと来々軒というさびれたラーメン屋に入った。彼らにラーメンの味が今一つと指摘されてから、店の女主人タンポポは様々な協力を経ながら商売繁盛を夢見てラーメン作りに没頭する。

監督第二作目の『タンポポ』は、徹底的に「食」にこだわった、日本映画でも特異な存在。ラーメンに「こだわり」とか「究極」とか「激戦区」とか、なかった頃のお話。これが、非常に面白い。誰も思いつかなかったラーメン映画、伊丹十三の先見の明が感じられます。似た映画を作れば二番煎じになるので、それ以後、ラーメン映画はだれも手が出せなくなりました。お行儀が悪いのはダメ!と、食べ物にはルールが多くあるけれど、その味を味わえるのはその時その人だけ。本編もとても面白いけれど、途中に入る全く関係のないエピソードが味を出しています。幻想的なほどエロチックだったり悲しかったり…。いちばん好きなのは白服の男が凶弾に倒れ、イノシシの腸詰めの話をするシーンです。もう300回くらい見たかな?マーラー5番の悲しいメロディと相まってつい涙がこぼれます。

様々な「食」というか「欲」のドラマを、同時間に起こっているというグランドホテル形式を用いて、最後に母乳を赤ん坊に与える母親の乳房のアップを延々に映すというエンディングはまさに伊丹監督特有のネチッこい演出で延々と見せる。母乳こそ、食の原点とばかりのラストシーンは、ちょっと目のやり場に困りますが、爽やかに迎えた終演後だけに、異様に説得力がありました。ユーモアがあってほのぼの心地よく、とても後味がいい映画だと思います。 固定観念にとらわれず楽しんでほしいという食べ物をユーモア感が好きです。


ジャンル:コメディ

製作国:日本

製作年:1985年

初公開日:1985年11月23日

上映時間:115分

配給:東宝

出演: 山崎努, 宮本信子, 役所広司, 大滝秀治

監督: 伊丹十三

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